『民事信託・家族信託』とは?『遺言』『後見制度』との違い
≪目次≫
1.民事信託・家族信託とは?
巷の至るところで、『民事信託・家族信託』という言葉を目にする機会が増えてきました。
電車やバスで移動中の電子公告・車内アナウンス、書店やコンビニに陳列する相続関係雑誌、などなど、いかに世の中の注目度が高まっているかが伺えます。
ところで、『民事信託・家族信託』をすることで実際にどんなことが可能になるのか、そもそも『民事信託・家族信託』って何なのか、なんとなくは分かるけど実際にはフワっとしか認識していない、そんな方も多いのではないでしょうか?
『信託契約』とは...『信用出来る人・機関に自身の所有する財産を託す契約』の事を指します。
信託契約の基本構造として、
委託者:財産を所有している人
受託者:財産を管理する人
受益者:財産から得られる利益を享受する人
受託者:財産を管理する人
受益者:財産から得られる利益を享受する人
の3者から成り立っていて、「委託者=受益者、受託者=受益者」など、一人で複数の立場を兼任するケースも多々あります。
(※受託者監督人:財産がしっかりと管理されているか、受託者を監督する人 がいるケースもあります。)
一般的には『信託契約』という言葉から、信託銀行が思い浮かぶところですが、
信託銀行等で商品化されている『投資信託』や『遺言信託』(=遺言書作成+遺言書管理+遺言執行)などは、
「受託者が信託報酬を得て行う信託契約=商事信託、営業信託」を指しています。
一方で、「受託者が信託報酬を得ないで行う信託契約=民事信託」であり、受託者=財産を管理する人が家族や親族である場合を、俗に『家族信託』と呼んでいます。
(『家族信託』という言葉は、実は法律用語ではないのです。)
一例を挙げますと、「両親の持っている家を子供が管理する。」など、実は普段とても身近で起こりうる事を信託契約というカタチで運用すると考えれば、『民事信託・家族信託』というワードがぐっと身近に感じられるようになるのではないでしょうか。
2.『遺言』と『民事信託・家族信託』との違い
『生前対策』として代表的なものに『遺言』があります。
そもそも、遺言書を書く理由としては、
・民法で定められた法定相続と異なる相続割合を決めることができる
・誰が何を相続するか、遺産分割の方法を決めることができる
・定められた相続人(法定相続人)以外の人に財産を遺贈できる
・自分の想いを遺すことができる(附言を利用したトラブル防止目的)
・誰が何を相続するか、遺産分割の方法を決めることができる
・定められた相続人(法定相続人)以外の人に財産を遺贈できる
・自分の想いを遺すことができる(附言を利用したトラブル防止目的)
といったものが挙げられます。遺言書を書くことで、法定相続ではできない財産の遺し方が可能になるのですね。
しかし、『遺言』を活用しようと遺言書を書いた場合でも、次のような不都合が生じる可能性があります。
・そもそも遺言書が効力を発揮しない。
・遺言書の書換えが発生するリスクがある。
・遺言書の書換えが発生するリスクがある。
これらは本人が一人で遺言書を作成する、「自筆証書遺言」の場合によくあるケースです。
・生前には効果を生じないため、認知症対策にはならない。
・財産の承継先は一代限りである。
・財産の承継先は一代限りである。
遺言書の効力が発生するのは相続発生時からのため、生前対策にはなりません。
また、一代限りのため、例えば先祖代々の家を孫の代まで継がせたい、
といった内容を含めることはできません。
一方で、『民事信託・家族信託』を活用した場合、これらの不都合を解消することが出来ます。
・そもそも遺言書が効力を発揮しない。
・遺言書の書換えが発生するリスクがある。⇒専門家と相談しながら信託契約を作成し、法務局に信託登記を申請します。
・
これによって、そもそも信託契約内容が効力を持つかどうか事前に精査され、信託登記後は変更登記の内容を委託者ないし受益者と受託者間で協議することになるので、勝手に内容が書換えられるというリスクを潰すことが出来ます。
(変更登記申請自体は受託者単独での申請が可能です。)
・生前には効果を生じないため、認知症対策にはならない。
・財産の承継先は一代限りである。⇒信託契約には生前、自身が健在であるうちに、認知症になった際の財産の管理・運用から、相続発生後の財産の承継先を詳細に定めることが出来ます。
(配偶者→長男→次男の息子、なども可能です。)
・財産の承継先は
(配偶者→長男→次男の息子、なども可能です。)
詳細は本サイト、モデルケースにある『家計承継信託』『遺言代用信託』をご参照ください。
3.『成年後見制度』とは..
【認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力不十分となった方のために、法律面や生活面で支援する制度。成年後見人は、法定代理人として、本人のために本人に代わって「法律行為」「財産管理」「身上監護」を行う。】
具体的には、お金の管理(銀行での手続きや支払い)、施設との契約、不動産の契約、年金の手続きなどを行います。
「財産管理」
・預貯金、不動産等の管理
・収入/支出の管理
・有価証券等の金融商品の管理
・税務処理(確定申告、納税など)
・預貯金、不動産等の管理
・収入/支出の管理
・有価証券等の金融商品の管理
・税務処理(確定申告、納税など)
「法律行為」「身上監護」
・医療に関する契約
・施設への入所契約
・介護に関する契約
・生活、療養看護に関する契約
・医療に関する契約
・施設への入所契約
・介護に関する契約
・生活、療養看護に関する契約
さらに成年後見には「法定後見制度」「任意後見制度」とありますが、
詳細は相続専門サイト「成年・任意後見」ページにてご確認ください。
( ⇒相続専門サイトはこちら )
こと「認知症」というキーワードにおいて、『成年後見制度』『遺言』『民事信託・家族信託』とはそれぞれ密接な係わりがあります。
『遺言』と『信託』との関係性は死亡後の話ですが、『後見制度』と『信託』との関係性は生前対策について、ということになるでしょう。
4.『後見制度』のデメリット
公的な制度である後見制度ですが、いざ利用してみようとした結果発生してしまったデメリットもあるようです。
①希望と違う後見人が選任されてしまった。
→家庭裁判所に申立てをしたところ候補者以外の後見人が選任される場合があります。
その裁判所の選任の判断について不服申立てをすることは出来ません。
②申立てを取り下げられなくなってしまった。
→申立てをすると、家庭裁判所の許可が下りない限りは取り下げをすることが出来ません。
そのため希望者が後見人に選任されそうにないという理由などでは取り下げが認められないのです。
③手続きに時間がかかる。
→後見人就任(審判確定)までに2か月前後手続き期間が必要なため、迅速性に欠けます。
④申立てに想定外の高額な費用がかかってしまった。
→医師による鑑定が必要な場合、裁判所に納める費用・司法書士報酬の他に鑑定費用がかかり、合計20万円前後の費用が掛かるケースもあります。
⑤被後見人の財産を申立て前のように運用できなくなってしまった。
→あくまで被後見人の財産を管理する、という点から、財産を被後見人以外の為に使用したり、本人名義の不動産に担保を設定したりすることなどは原則認められません。
⑥途中でやめられない。
→被後見人本人の判断能力が回復する、または亡くなるまで後見制度は続きます。
後見人自らが後見人を放棄する、といったことは出来ません。
5.まとめ
●信託契約とは委託者が自身の財産を受託者に信じて託す契約であり、非営利目的で行う信託を民事信託という。
●遺言でも財産の承継はできるが一代限りであり、遺言者の死亡後に効果が発生する為、認知症対策にはならない。
●後見制度は認知症になった後でも活用できる公的制度であるが、あくまで被後見人の為の制度であり、家族で柔軟に対応するといった事が出来なくなるデメリットが存在する。
●認知症対策には民事信託(家族信託)が非常に友好的である。
成年後見制度と民事信託・家族信託は比較対象として挙げられる場面が多くあります。
ですが実際のところ、信託契約を結ぶ時点で委託者の意思表示がはっきりしている事が信託契約の前提となります。
そういった意味では、民事信託・家族信託を利用できる場面と後見制度を利用する場面では状況が異なるのです。
成年後見制度を使わざるを得ない状況になる前に信託契約について専門家と相談する事が、生前対策をする上でなにより重要と言えるでしょう。
家族信託をご検討の際は、是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。
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