ペット信託
-大切な家族の生涯を守るために-
「自分の死後、ペットの世話をしてくれる家族がいない」
犬や猫などその種類は問わず、大切な家族(ペット)と暮らしている方にとって、ご自身の亡き後に残されるペットがどうなるか心配ですよね。
とは言え、親戚や友人・知人であれ、ペットの飼育には費用も労力もかかるため、気軽に頼めるものでもありません。
また、生前に誰かに頼んでいたり、遺言を遺していたとしても、ご自身の亡き後、しっかりと飼育してくれるかを確認する方法もありません。
このような状況にお悩みの飼い主様に、「大切な家族(ペット)のために財産を遺し、お世話と共にその財産の管理をしてもらう」ことを目的とした家族信託、『ペット信託』があります。
目次
- ○ ペットの信託の概要
- ・ペットに直接的に財産を遺すことは出来ない
- ・「受益者=受託者」と設定しないこと!!
- ・ペットの情報をしっかり伝えておく
- ・信託監督人を就けることが重要
- ・信託財産には信託報酬を含めることも出来る
- ○ ペット信託のスキーム
- ・ペット信託を行う時の注意点
- ・①ペットを飼育してくれる信頼できる人がいるか
- ・②ペットを飼育してくれる人をしっかり監督できるか
- ・③税務上の問題を解決しているか
ペットの信託の概要
この信託契約は、財産の一部を信託契約を用いて信頼できる人や団体に託し、ご自身がペットを飼育することが難しくなったときに、その財産から飼育費を支払うことによって、ペットが生涯幸せに過ごせるようにする仕組みです。
ペット信託では、ご自身が急な病気やケガで面倒を見ることができなくなったとしても、新しい飼い主を指定しているため、その後もペットが問題なく生活を送ることができます。
また、飼い主が亡くなった場合でも、ペット信託を行っていれば、ペットの飼育費は相続財産と別の扱いになっているため、大切なペットのために確実に財産を残すことができます。
ペットに直接的に財産を遺すことは出来ない
「ペットのために財産を残し、お世話と共にその財産を管理してもらう」という目的は、はっきりしています。
しかし、ご自身にとって大切な家族とは言え、法律上ではペットは『動産』という扱いになり、遺言書等で直接ペットに財産を遺すことは出来ないのです。
従って、家族信託においてもペットを直接『受益者』に設定することは出来ない為、上記のような形式を選択します。
「受益者=受託者」と設定しないこと!!
ここで重要なのは、「ペットのお世話をしてくれる人」と「そのためのお金の管理をしてくれる人」を同一人物にしないことです。
信託法では、「受益者=受託者」と設定してしまうと、信託契約開始時より1年間で信託契約は強制終了となってしまいます。
これでは大切なペットの世話をお願いしたいという家族信託の趣旨から外れてしまうため、例えばペットショップや動物愛護団体等をペットのお世話を頼む『受益者』として設定し、親族や友人・知人に頼んで『受託者』となる信託契約を締結します。
ペットの情報をしっかり伝えておく
ペット信託するにあたり、何よりも重要なのは「大切なペットが生涯安心して暮らせるか」という点です。
そのため、大切なペットのお世話をしてくれる人にペットの情報をしっかりと把握してもらうことが重要です。
【ペットに関する必要情報の例】
■名前
■種類・性別
■生年月日(年齢)
■食事の好き嫌い
■体調(持病など)
■かかりつけの病院
信託監督人を就けることが重要
家族信託の大きなメリットとして、信託財産の利用の仕方に監督人を就けることができるできます。
ペット信託によってペットの世話を頼まれた人には、
『善良な管理者の注意を怠ってはならない義務』
『受益者のために忠実に事務に当たらなければならない義務』
『信託財産とその他を分別して管理しなければならない義務』
が課せられます。
もし、信託内容通りに適正に飼育がなされていない場合、監督人はそれを指摘し改善させることができます。
これによって、遺言などで委託する以上に、実質的な効力を持ってペットを託すことができます。
信託財産には信託報酬を含めることも出来る
本来、家族信託では委託者と受託者が家族や親族であることが多く、受託者に対し信託報酬を設定するケースは多くありません。
しかしペット信託では受託者や受益者が家族等ではない第三者のケースが多いため、ペットの世話や財産の管理に対する謝礼を信託報酬として設定すると良いでしょう。
ペット信託のスキーム
実際に家族信託を利用したペット信託をする場合、次のようなスキームがあります。
委託者兼第一受益者:飼い主(ご自身)
受託者:信託財産の管理を任せる個人や団体
第二受益者:ペットの世話を任せる個人や団体
信託監督人:司法書士等の士業専門家
信託財産:ペットの飼育費およびペットそのもの
① 飼い主(ご自身)が健在なうちは、委託者兼第一受益者としてこれまで通りにペットの世話をしていきます。
② 飼い主 (ご自身)が認知症や急な病気・ケガなどでペットの世話が難しくなった段階で、第二受益者として設定された個人や団体がペットの世話を継続していきます。
③ 信託監督人として司法書士などの士業専門家を設定することで、飼い主(ご自身)が世話を出来なくなった後もペットの飼育がしっかり行われているかを管理・監督することができます。
ペット信託を行う時の注意点
ペット信託検討するにあたり、次の3つの点に注意しましょう。
①ペットを飼育してくれる信頼できる人がいるか
②ペットを飼育してくれる人をしっかり監督できるか
③税務上の問題を解決しているか
①ペットを飼育してくれる信頼できる人がいるか
ペットを預ける人や団体は慎重に検討しましょう。
施設などで預ける場合には、その施設が信託契約に対応できるかどうか相談する必要があります。
②ペットを飼育してくれる人をしっかり監督できるか
信頼できる人が見つかったとしても、その人がしっかりとペットの面倒を見ているかどうか監督する必要があります。
信託監督人がいないと、ペットを預かる人がお金を自分のために使ってしまったときに、指摘する人がいなくなります。
③税務上の問題を解決しているか
ペットは法律上「動産」として扱われます。その結果、ペットを預かってくれる人に贈与税が生じる可能性があります。
よって、ペット信託をするときは、税務上の課税リスクがないか、きちんと確認する必要があります。
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