家族信託の『委託者』が死亡したら信託契約はどうなる?
≪目次≫
1.委託者が亡くなったら、信託契約はどうなる?
家族信託(民事信託)の大前提として、『委託者が自己の財産を信頼できる者(受託者)に信じて託す』というものがあります。
自己信託等を含め、当然、委託者が居なければそもそも信託契約は成り立ちません。
では、仮に委託者Aさんが受託者Bさんと信託契約を結び、受益者Cさんが利益を受けていたとして、委託者Aさんが亡くなったらどうなるでしょう?
今回は、「家族信託において、委託者が亡くなったらどうなる?」をテーマに見ていきましょう。
そもそも、家族信託の信託契約が終了する時とはどのような状況でしょうか。
信託法の定めた特殊な例を除いて、代表的な終了事由に、「委託者の死亡によって信託契約の取消をする」というものがあります。
もちろん最初の取り決めでその他に定めることも可能ですし、途中で変更する事も可能です。
但し、途中で変更するには、原則として委託者・受託者・受益者の三者間での合意が必要となります。
2.委託者の地位は相続できるの?
前述したように、信託契約で『委託者が死亡した場合に関する定め』があった場合、それに従います。
もし信託契約の中に委託者が死亡した場合に関して特段の定めが無かった場合、『遺言信託』か『遺言信託以外の信託』によって異なってきます。
≪『遺言信託』とは?≫
実は、世間で出回っている『遺言信託』は2種類存在している事をご存知でしょうか。
ひとつは法的な意味で、「遺言によって信託行為を行う」ことです。
一般的に家族信託では、生前に委託者と受託者の間で信託契約を結びますが、委託者が遺言によって受託者に信託をお願いすることもできます。
(もちろん受託者になるよう遺言された者は、承諾するか否かを選択可能です。)
もうひとつ、信託銀行が提案している「【遺言信託】という名のサービス商品」があります。
遺言の内容を実現させる手続きを『遺言執行』と呼びますが、信託銀行の遺言信託という商品では、信託銀行がその遺言執行者となってくれるサービスを指しています。
2-1.『遺言信託』の場合
こちらは法的な意味での、「遺言による信託行為」を指す遺言信託ですが、この場合、委託者が死亡しても委託者の地位・権利が相続される事はありません。
なぜなら、その遺言信託で受益者として指定されている者が相続人ではない場合、あるいは相続人の一部のみが受益者として指定されていた場合、その信託財産について「受益者」と「相続人」が利益相反の立場となってしまうからです。
つまり、「委託者は何らかの理由で相続人ではなく(または全ての相続人ではなく)受益者を指定しているのだから、もともと相続人に(または一部の相続人には)その権利・地位を与えるつもりではなかった。」とみなされるのです。
2-2.『遺言信託以外の信託』の場合
相続により、委託者の地位・権利が相続人へと相続されます。
しかし、例えば委託者の法定相続人が複数名いる場合、委託者の地位が相続されることで信託契約の関係性が複雑化されることが容易に予想されます。
ですので実務上では、どのような信託契約であっても『委託者の死亡に関する定め』を信託契約に記すことが一般的と言えるでしょう。
3.まとめ
◎信託契約に『委託者が死亡した場合に関する定め』があれば、その定めに従う。
◎「遺言信託」の場合、委託者が死亡しても委託者の地位・権利は相続されない。
◎「遺言信託以外の信託」の場合、委託者の死亡により委託者の地位・権利が相続人へ相続される。
◎「遺言信託」の場合、委託者が死亡しても委託者の地位・権利は相続されない。
◎「遺言信託以外の信託」の場合、委託者の死亡により委託者の地位・権利が相続人へ相続される。
家族信託は他の契約毎よりも契約における自由度が高く、また専門的な資格を要さない為、その分スキームが複雑になってしまったり、実際の信託契約の効果が発揮できないといった危険性をはらんでいます。
まだまだ比較的新しい制度の為、士業専門家であっても実務経験がある法人・事務所は少ないと言えるでしょう。
ご検討の際には是非一度、経験豊富な相続・生前対策専門チームが在籍する、渋谷区マークシティ・目黒区学芸大学駅の司法書士法人鴨宮パートナーズまでご相談ください。
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