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信託トピックス

家族信託は遺留分対策になり得る?信託設計時に検討すべきポイントとは

信託設計時に検討すべきポイントとは

 
≪目次≫




 
1.『遺留分』とは?

このトピックスをご覧頂いている皆様でしたら、相続手続というものにおいて『遺留分』という単語を耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。

ご存知ない方の為に簡単に説明いたしますと、『遺留分』とは、「一定の範囲の法定相続人に認められた、最低限の遺産を取得できる権利」の事を指します。

この遺留分を侵害された相続人は、不足分を他の相続人に対して請求する事が出来ます。

これを『遺留分侵害額請求』と言い、金銭による請求が可能です。

例えば、妻に先立たれた夫が亡くなり、一人っ子の長男が全て相続できるものだと思っていたら、遺品の中から遺言書が見つかり、全財産を親戚の姪に遺贈する旨が記されていた。

このような場合、遺言者の意思を尊重はするものの、長男からしてみれば自分が正当に相続できるはずの権利を侵害されたことになりますので、遺産総額の2分の1にあたる額を姪に請求する事が出来ます。



詳細につきましては、弊社の相続サイトよりトピックスをご参照ください。


相続専門サイトの関連トピックス

【遺留分制度の見直し】

【遺言書と遺留分請求】




 
2.家族信託は遺留分対策にはならない

さて、そんな相続人を守るための『遺留分』ですが、これから生前対策を検討しようとしている、といった立場の方からすると悩ましい問題でもあります

兄弟仲の悪いご家庭だったりすると、普段から世話になっている次男に多く財産を遺してあげたいけど、そうなると長男が黙っていない、なんて事は残念ながらよくあるお話ですので、我々専門家としてはその点をしっかりと踏まえた上で様々な対策をご提案していきます。

ところで、この遺留分の対象となる相続財産とはどの範囲まで含まれるか、ご存知でしょうか。

これはかなり難しいところで、現状ですと、生命保険に関しては受取人固有の財産であるとの見地から、原則遺留分の対象にはならない、と最高裁の判決が下されています。

では、今回のトピックスのテーマとなる「家族信託が遺留分対策になり得るか?」という点については、残念ながら東京地裁の判例で、『信託契約の一部を公序良俗に反して無効にする』という判決が下されています。


 
2-1.信託契約一部無効となった判例

この判例で無効となった契約は以下のような内容でした。

 


①妻を亡くした父Aには、長男B、次男C、次女Dがおり、父Aは末期のガンを患っていた。そこで死因贈与契約を作成する事となった。
契約はすべての不動産、1憶3,000万円余りの預貯金、有価証券等を次男Cに3分の2、次女3分の1で死因贈与するという内容だった。

②この死因贈与契約の数日後、今度は委託者=父A、受託者=次男C、第一受益者=父A、第二受益者=長男B(6分の1)、次女D(6分の1)、次男C(6分の4)とし、第三受益者として次男Cの子らが均等に取得する、という内容の受益者連続信託契約を締結した。

信託財産はすべての不動産(賃貸物件等の利益を生み出すものと、自宅等や使用貸借中の価値の低い土地)と金銭300万円で、このすべての不動産とは先に契約された死因贈与契約の対象となっていたため、贈与契約からはすべての不動産が外される事となった。

③ほどなくして父Aは亡くなり、長男Bから遺留分を侵害されたと遺留分減殺請求が提訴された。この間に一部の信託財産の不動産を換価処分し、相続税申告が行われた。


さて、一見すると契約内容としては全く問題ないように思えるこの信託契約ですが、いったいどの点が無効と判断されることになったのでしょうか。


 
2-2.無効となった争点

この件での主な争点は、


委託者Aの意思能力の有無(末期ガンにより意識朦朧としていたのではとの疑義)

公序良俗に反するか


等々、複雑に絡みあっていたもので、判決は下記のように判じられています。


納税資金用の処分予定不動産賃貸物件に関しては信託契約は有効とする。

自宅等使用貸借中の土地に関しては、信託契約において到底資産価値があるとは考えられず、遺留分潜脱目的の信託と考えられ公序良俗違反により無効である

・信託による土地の所有権移転は形式的なものの為、遺留分減殺請求の対象は受益権とする。

※なお今回ご紹介した判例では『遺留分侵害額請求』ではなく『遺留分減殺請求』と記載しておりますが、これは民法改正される前の当時(平成27年時点)の請求に即した形で記載しています。


 

この判決のポイントは、公序良俗違反により信託契約が一部無効としていて、その理由を遺留分潜脱目的の信託であるから、と裁判所が判断している点です。

もう少し平たく言えば、「第一、第二受益者のために売却予定の不動産と賃貸物件を信託財産とするのは、そこからもたらされる利益を考えると理に適っているが、自宅と使用貸借中の土地は資産価値としてはほとんどないから信託財産にする意義はあまりないと言える。よってこれは委託者に相続が発生した時の遺産総額を下げ、遺留分を潜脱するための目的であるだろう。」と判断されたという事ですね。

地裁レベルでの判決であり今後変わっていく可能性もありますが、現時点ではやはり、基本的に遺留分対策にはならないという前提で信託設計していく必要があるでしょう

設計段階で遺留分を侵害する可能性があると判断できる場合、生命保険や10年以上の長期に渡る生前贈与など、遺留分対策として効果的とされる方法を併用する必要があります

 

 




いかがでしたでしょうか。

今回ご紹介した判例は状況的にもかなり特殊であり、そもそもの家族信託の意図を考慮すると自宅等が信託財産としてふさわしくないという結果に違和感は残ってしまいますが、ご家庭によってはこの判例のような状況に近しい契約となる可能性があるのも否めないでしょう。

大切な事は、そもそも信託契約も生命保険等も生前対策=生きているうちにできる対策ですので、早めに家族会議を開いたり、専門家に相談する事が肝心です。

当法人ではご家庭の様々なご事情に合わせて、家族信託を含め最も効果的な生前対策方法をご提案していきます。

生前対策をお考えの際には是非一度、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にお問い合わせください。
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