家族信託を検討する際のデメリットとは?
≪目次≫
1.身上監護権はない
2.財産管理を誰もやりたがらない可能性がある
3.他の親族が不公平を感じる可能性がある
4.遺留分侵害請求をされる可能性がある
5.信託不動産の損失を別の信託財産で相殺できない
6.信託財産として扱えない不動産がある
7.税務申告が必要となる可能性がある
8.相続税対策にはならない
9.多額の費用がかかる可能性がある
10.専門家によっては効果が未知数
2.財産管理を誰もやりたがらない可能性がある
3.他の親族が不公平を感じる可能性がある
4.遺留分侵害請求をされる可能性がある
5.信託不動産の損失を別の信託財産で相殺できない
6.信託財産として扱えない不動産がある
7.税務申告が必要となる可能性がある
8.相続税対策にはならない
9.多額の費用がかかる可能性がある
10.専門家によっては効果が未知数
【前提】『認知症』になってからでは利用できない
認知症対策としての生前対策方法の最有力候補として近年台頭してきた家族信託(民事信託の一種)ですが、これまでに様々なメリットや活用方法を取り上げて参りました。
しかし物事には表があれば裏もあるように、いくら家族信託と言えど、あらゆる人のニーズに全て対応できる万能策、とまではいかないようです。
今回はあえて家族信託のデメリット(もしくはカバーしきれない範囲)に目を向けてみる事で、「何が出来ないのか」「何が足りないのか」を把握し、ご自身に最適なプランをご検討される上での一助となれば幸いです。
家族信託だけに限らず、全ての遺言、贈与、任意後見等の生前対策と呼ばれるものは全て、当事者本人の意思能力が求められます。
よって、『認知症である=意思能力が欠如している』と判断されてしまった場合は、残念ながら、その後、何の対策もできなくなります。
何かしらの生前対策をご検討されている方で、当事者の方の意思能力に不安がある場合は、まずは一刻も早く司法書士にご相談ください。
1.身上監護権はない
『身上監護』とは、成年後見人が被後見人の生活や健康、療養等に関する法律行為を行うことを指します。
例えば認知症の家族が施設に入居するとなった場合、意思表示・判断能力の観点から本人が手続する事は出来ないため、代理で手続きする方が必要となります。
この時、家族信託で子が受託者となっていた場合でも、親の代理人として入居契約をすることはできません。
家族信託契約は、あくまでも信託財産の財産管理のみが目的となる為、身上監護のように代理人として動くことはできないのです。
【解決策】
家族信託契約と同時に、任意後見契約を利用します。
家族信託契約と同時に、任意後見契約を利用します。
子や信頼できる人を後見人に指定することで、受託者と後見人が協力して(受託者と後見人が同一人物な事もある)委託者=被後見人のサポートをすることが出来ます。
2.財産管理を誰もやりたがらない可能性がある
①例えば、建物が目的となった時の家族信託では、建物の名義を変更するため、受託者は建物について管理する義務が発生します。
もしも老朽化が原因となり誰かが怪我をしてしまった場合、損害賠償責任を問われることとなります。
更に、信託財産以上の額で請求された場合、受託者自身の財産から賠償する事となります。
②名義が受託者となってしまっている以上、固定資産税の納税も受託者が負担する事となります。
③家族信託契約を締結すると信託契約終了となるまで、ある程度長期間に渡り、受託者が契約内容に拘束される事となります。
④受託者は信託契約が終了されるまで、信託財産の収支を作成報告し、書類保管する義務が発生します。
上記理由により、家族信託を検討したにもかかわらず肝心の受託者に誰もなりたがらない、といった状況が考えられます。
3.他の親族が不公平を感じる可能性がある
例えば兄弟が複数名いる親子間で家族信託しようとした時、受託者となった子は、信託契約が終了となるまで、信託財産を形式上ではありますが、預かる事となります。
もし他の兄弟がこの家族信託の事を知らされていなかった場合、表面上では多くの財産を受託者となった子が手にしたと考え、要らぬ争いを生み出しかねません。
4.遺留分侵害請求をされる可能性がある
相続で遺言書があった場合、本来相続分があると思っていた相続人が何も得ることが出来ず不服に思い、自分の取り分の主張をする『遺留分侵害請求』をする可能性があります。
これは家族信託の場合でも、最終的な親の財産権(受益権)を承継する際に起こり得ます。
家族信託契約による承継が遺留分の対象になるかどうかは現状では明確になっていません。
【解決策】
2・3・4全てに通じて言える事ですが、家族会議を開き、家族信託契約の当事者だけでなく、その周囲の人達の同意や協力を得ておく事が、トラブルを未然に防ぐうえで大切となります。
2・3・4全てに通じて言える事ですが、家族会議を開き、家族信託契約の当事者だけでなく、その周囲の人達の同意や協力を得ておく事が、トラブルを未然に防ぐうえで大切となります。
また、例えば、受託者には信託財産より信託報酬を支給する等、当事者への配慮もしっかり検討しておきましょう。
5.信託不動産の損失を別の信託財産で相殺できない
家族信託を検討する方の中には、複数の事業主で、損益通算や損失繰越を経営に生かしているケースもあります。
家族信託で、ある不動産を信託財産とした場合、それ以外のものとは分離されます。
よって、信託した不動産については、信託していない事業との損益通算が出来ない事となります。
またその信託不動産事業で赤字が出た場合、繰り越しする事も出来ません。
【解決策】
家族信託契約の設計時点から上記のようなリスクをしっかり検討し、場合によっては司法書士だけではなく会計士・税理士等を交えて設計する必要があります。
家族信託契約の設計時点から上記のようなリスクをしっかり検討し、場合によっては司法書士だけではなく会計士・税理士等を交えて設計する必要があります。
6.信託財産として扱えない不動産がある
親からの相続等で、畑や田んぼを所有している方が信託を検討している場合、自宅などはもちろん可能ですが、畑や田んぼは信託する事が出来ません。
農地に関しては、農業協同組合または農地保有合理化法人による信託引き受け以外、原則、認められていないのです。
7.税務申告が必要となる可能性がある
家族信託では、受託者となった者が、税務署へ書類の提出を求められるケースがあります。
例えば、賃貸不動産を信託した場合など、信託財産から発生する収益の額が3万円を超えると、毎年、信託財産の計算書を作成、提出する必要があります。
8.相続税対策にはならない
生前対策という言葉から考え違いしてしまう方がいらっしゃいますが、家族信託そのものには、節税効果はありません。
例えば自宅を信託した時に、不動産等の名義は親⇒子に変更されますが、財産権(受益権)は親元に残る為、財産の評価額を下げることにはならず、相続が発生した際には帰属権利者に相続税がかかってしまいます。
【解決策】
家族信託の補助的役割として、生命保険の利用等、相続税を下げる意味での生前対策を同時に講じる事で、その後の相続発生時への対応策とすることが出来ます。
家族信託の補助的役割として、生命保険の利用等、相続税を下げる意味での生前対策を同時に講じる事で、その後の相続発生時への対応策とすることが出来ます。
9.多額の費用がかかる可能性がある
相談先によりまちまちではありますが、家族信託は他の生前対策として挙げられる遺言等に比べて、専門家への報酬を含めたトータルの費用が割高となる事がほとんどです。
10.専門家によっては効果が未知数
現在、相続・生前対策という分野には各士業だけでなく様々な業界が参入してきています。
実際は経験もないのに、広告効果だけで依頼を受任し、形だけの信託契約を結び、結果その後のフォローがない、などと、知識・実績のない事務所に任せてしまう事のリスクがあります。
いかがでしたでしょうか。このように万能とも思える家族信託にも、やはりそれなりのデメリットやリスクが存在します。
しかし、上記で挙げた解決策でもカバーしきれない範囲となると、仮に他の生前対策を講じたとしても対処できない、といった結果になるのも事実ではあります。
何よりも肝心な事は、こういったデメリットを念頭に置いた上で、出来るだけリスクを軽減する対策法をご提案出来る、頼れる専門家に相談する事ではないでしょうか。
是非一度、渋谷区マークシティ、目黒区学芸大学駅の司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談ください。
SHARE
シェアする
[addtoany]シェアする