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信託トピックス

家族信託とは違う!?信託銀行のサービス、『遺言信託』とは?

信託銀行のサービス『遺言信託」とは?

 
≪目次≫


 

前回の記事で『遺言信託』の種類について触れる機会がありました。
(⇒前回の記事【家族信託の『委託者』が死亡したら信託契約はどうなる?】はこちら)

世の中で出回っている『遺言信託』という言葉には、法的な意味での「遺言による信託」の他、信託銀行が商品として打ち出している『遺言信託』というものがあります。

今回の記事では、この信託銀行の『遺言信託』について、私たち司法書士がご提案している家族信託との違いや、そのメリット・デメリットについて取り上げてみたいと思います。


 
1.信託銀行の『遺言信託』というサービス

信託銀行のサービスとしての『遺言信託』は、簡単に言ってしまえば、銀行が遺言作成からサポートし、相続が発生した際にはその遺言の遺言執行者となってくれるサービスです。

遺言の内容を実現する手続きを「遺言執行」、遺言執行手続きを担当する者を「遺言執行者」と呼びます。

そもそも法的には、遺言の内容を実現するために必ず遺言執行者が必要なわけではなくありません。

遺言執行者が必要な場合とは、
①遺言による子供の認知の届出
②遺言による相続人の廃除又は廃除の取消を家庭裁判所に申立て

のいづれかをするケースのみです。

いづれの方法も相続人間での利益相反が発生する為、特定の相続人に実現を委ねると公正を期す事が難しく、遺言執行者が必要とされるのです

また、上記に該当しない場合でも、例えば法定相続人がいるにもかかわらず、第三者に遺贈する、といった内容であった場合、その執行を相続人に期待する事は難しいでしょう。

遺言で指定され遺贈を受けた第三者は、相続人全員に対し遺産の引渡しを要求でき、相続人はそれに応じる義務がありますが、相続人が素直に従わない危険性もあります。

このような時にも、遺言者が遺言執行者を指定しておくと安心と言えるでしょう。

『遺言信託』では、この遺言執行者の立場を信託銀行が受け持つ事になります。
(以下、本記事内で使用される『遺言信託』はこの信託銀行の商品を指します。)



 
2.紛らわしい『遺言信託』の内容

さて、ここまで読んだ方で、勘の鋭い方は既にお気づきかもしれませんが、そもそも信託銀行の『遺言信託』はいわゆる家族信託の事を指すのではなく、「遺言を信託銀行に信じて託す、つまり遺言を(信託銀行に)信託する」という意味で名付けられています

よって信託契約ではない為、家族信託としての大きなメリットである認知症対策には成り得ません

紛らわしいもので、『遺言代用信託』と呼ばれるものがあり、これは言で相続人に遺産を配分するのではなく、信託契約で自分の死後、受益者として指定した者(もともとは相続人)に信託財産を渡す、もしくは信託財産からの収益を渡してもらう、という内容です。

遺言信託という語感から皆様が想像する家族信託は、おそらくこの『遺言代用信託』を意味するのではないでしょうか。

ここで、各信託銀行によって多少の違いはありますが、『遺言信託』の大まかなサービス内容を見ていきましょう。

 
①遺言の作成についての相談

遺言の内容をどのようなものにするべきか、信託銀行の担当者がサポートします。

 
②公正証書遺言の作成

遺言の内容確定後、公正証書にて遺言を作成します。

 
③遺言書の保管

完成した公正証書遺言の正本を信託銀行が保管します。

 
④定期照会・見直し

定期的に資産状態や相続人に変動はないか、遺言書の内容を見直す必要がないかの照会をしてくれます。

 
⑤遺言の執行

遺言者が亡くなったとき、近親者が信託銀行に連絡すると、遺言執行者として公正証書遺言に従い遺産を相続人、受遺者(遺贈を受ける人)に承継させる手続きを行います。


3.メリット・デメリット

【メリット】

まずメリットを見ていきましょう。


3-1.遺言が確実に執行されるという安心感

そもそも、
遺言執行者は未成年者・破産者以外を除き、誰でもなる事が出来ます。(民法1009条)

実際には司法書士等の専門家に依頼する事が多いのですが、個人の場合、遺言者よりも先に死亡してしまうリスクがあり、そうなってしまった場合、新たに遺言執行者を選び、遺言書の記載内容を変更する必要があります。

その点、法人でありなおかつ銀行という信頼性は、個人よりも圧倒的に安心であると言えるでしょう。


3-2.資産に関する積極的なアドバイス

信託銀行という性質上、遺言に記載された顧客の資産内容について、その資産の有効活用について積極的にアドバイスを受けることが出来るでしょう。

 

【デメリット】


次にデメリットを見ていきましょう。


3-3,信託銀行でないとできないサービスがない

前述した『遺言信託』のサービス内容ですが、実際には信託銀行以外でもすべてできる内容です。

遺言書の作成サポートから公正証書遺言の作成までは司法書士・弁護士・税理士・公証人でも出来ますし、遺言書の原本はそもそも公証役場が保管してくれるため、信託銀行で正本を保管する事にあまり意味がありません

見直しの必要性についても専門家に依頼すれば同様に出来ますし、遺言執行も専門家に依頼すれば事足りるでしょう。


3-4.トラブルが予想されるケースではそもそも引き受けられない

そもそも多くの遺言について遺言執行者は必ずしも必要では無く、トラブルが予想されるケースで遺言執行者が選任される事が多いと、前項まででお伝えしました。

が、しかし、状況によって遺言執行者がそのトラブルに巻き込まれる危険性もあり、事実上遺言執行手続を進めることが困難なケースもあります。

そういった何らかのトラブルの危険性が垣間見える場合、信託銀行ではそもそもそういった依頼を引き受けない可能性が高いようです

またそのようなケースでは遺留分侵害額請求権を行使される事も予想されるでしょう。

その場合、信託銀行を遺言執行者に選任したことは無駄になるにもかかわらず、これまでにかかった手数料が戻ってくることは無いのです。


3-5.財産に関する事項以外は引き受けられない

信託銀行は、法律により「財産に関する遺言執行」だけに限定されています。

これが意味するところは、遺言執行者が必ず必要となる「認知の届出」「相続人の廃除又は排除の取消し」に関する事は出来ない、という事です。

つまり信託銀行の『遺言信託』では、肝心の遺言執行者が必ず必要となるケースでは利用できないのです


3-6.手数料が高額

『遺言信託』は、基本料金で数十万円、公正証書遺言の正本の保管料が年額数千円、遺言内容の変更の際は手数料で数万円、遺言執行を行う場合、遺産内容に応じて百万単位の執行手数料がかかってきます。

また、そもそもの作成サポートの段階から実は専門家に外注しており、信託銀行側ではただ窓口となり、外注分の費用を上乗せしている、といったケースがあります。


3-7.信託銀行の営業

メリットと表裏一体ですが、資産を有効利用しましょう、という名目で、実は投資の勧誘など銀行側が手数料を稼ぐための営業の機会となってしまう側面があります。


3-8.不動産の名義変更・相続税申告は出来ない

不動産の名義変更は司法書士または弁護士、相続税の申告は税理士以外では代行する事が出来ません。



 
4.まとめ

 
◎信託銀行のサービスである『遺言信託』は、家族信託とは異なる
◎家族信託で遺言の代用となる信託契約は『遺言代用信託』
◎用途にはよるが、『遺言信託』にはメリットもあるがデメリットの比重が大きい

いかがでしたでしょうか。
こうしてみていくと、信託銀行の『遺言信託』を利用する必要性は、実はそれほど見当たりません。

もちろん、元々その信託銀行を利用していて、面倒なやり取りを一元化して任せたい、という考えの方にとってはメリットもありますが、高額な手数料と天秤にかけてしまうと、リーズナブルとは言い難いでしょう。

当法人では豊富な専門知識、士業ネットワークを活用して、『遺言信託』よりも安価に、面倒な一連の流れをトータルサポートする事が可能です。

ご検討の際には是非一度、経験豊富な相続・生前対策専門チームが在籍する、渋谷区マークシティ・目黒区学芸大学駅の司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでご相談ください。
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